入院中の朝 /series まにまに

と き)令和6年7月13日 am 6:00
ところ)手稲渓仁会病院 F棟6階デイルーム

朝がきた。起きたて独特の靄がかった心、後ろ向きではない種類のけだるさを伴う體(からだ)。デイルームから眺める手稲駅の風景も、まだまだ人がまばらな時刻。青いTシャツの40代男性だろうか。心地よいジョギング姿が、この朝を象徴している。

さて、これまでになく小説チックな書き出しになった series まにまに。あふれた想い、おりてきた言葉をそのまま書き留めるという時間のはじまりです。久しぶりですね。いろいろありました。最近いろいろありまして、もしかしたらせっかくの機会だから「日記的に」このいろいろな気づきの時間を、その経過を記録した方がいいのかもなと思いつつ、やっぱり「思いついたことを思いついたときに」というスタイルの方が性にはあっているような気もするので、まにまに に委ねることにしました。

入院しましたね。

入院から1週間がたちました。
腎臓です。もう中学校の頃から抱えていたものですが、特に配慮しないまま約30年が経ちまして、いや、親は配慮していたか。ま、とにかく30年ぐらいの時を経て、いよいよ末期的な状況がおとずれ、入院と相成りました。腎不全ってやつですね。5月ぐらいから体調がおかしくて、その体調の変化についても記録しておくと、いろいろ気づきになりそうなのだが、この series まにまににおいては、キーを叩く手をとめて記憶を丁寧に整理する、という行為が不可能なので、それはまたきっと別の機会にゆずることになるけれど、とにかく5月から体調がおかしくて、6月はもっとおかしくて、いよいよ先週7月の・・・・何日だっけか、とにかく先週の金曜日にようやく病院に検査に行きましたら、即入院 → 即手術 → 即輸血 → 即透析開始、と相成りました。あ、手術といってもアレです。透析するための管を身体に埋めこむぐらいのヤツです。とはいえ、これが首元で、部分麻酔でやるので、なかなかのつらさでございました。

さてさてそんな感じではじまっている入院生活も1週間がたちまして、いろいろ感情的にも入院生活リズム的にも落ち着いております。2日に1回は4時間ぐらいの透析があるし、その間に胃カメラやったり、リハビリやったり、「体温・血圧・酸素、はかりますねー」っていう経過観察をまるですれちがい際の挨拶のように何度も何度もやるし、おしっこの量や回数、飲み水の量も記録しなきゃだし、なんだかんだせわしない部分もあるのですが、とは言えやっぱり、普通の生活に比べればやることの種類が激減するので、とても落ち着いた時間を過ごしています。「病院的なこと」以外でやるのは

読書と仕事と感謝

なので、ほんとにシンプルで、まるで 禅寺にいるような心もち でおりまして、ありがたい日々を送っているところです。

そうそう、先週、検査が終わって家に帰ったその日、すぐに病院から電話がかかってきて「できるだけ早く、着の身着のままでいいから戻ってきてください。緊急入院です。すぐに対処しないといけません」と警告されから、もちろん少し動揺したわけだけど、そういわれた3秒後には「お、たくさん本読めるな」と思ったことは、正直に告白しておく必要があるでしょうか。ごめんよ家族。みんなに心配とか迷惑かけちゃう、と思うより前に、「本読める」と思ってしまったような気がするよ。そんなわけなので、電話をきったあとは、すぐに出張カバンに着替えと思いつく限りの本を詰めてきたのであります。しばらく、満足のいく食事にはありつけないだろうから、とも思って、わがままのように、妻に

「マンゴーたべたい」

と言ったら「たくさん食べな」って、複雑な、覚悟を秘めたような、不安を覚悟でぬりつぶすような顔で食べさせてくれたのも、ほんとに大事な一瞬でした。それは ちいさな儀式 みたいなもので、普段なら、この超贅沢マンゴー、それは沖縄のお父さん、妻のお父さんが、特に孫たちのことを想って丁寧に丁寧につくった無農薬のおそらくこの世で一番おいしい食べ物なのですが、そのマンゴ―を、自分だけが、たっぷりと食べる、なんてことはありえないのです。普段ではありえない。普段ではありえないことを、味わったことのない緊張感と不透明な未来を目の前に、ひとり贅沢にかぶりつくマンゴー。それは、一つの、ささやかだけれど明確な、儀式でした。その後味を口に残しながら、たくさんの本をつめこんだキャリーケースと共に、この病院に、いわゆる闘病生活というものに乗り込んだわけでございました。

ただ、闘病というには、実は私の心持ちは穏やかでした。
病院に到着してからの病状説明、首に管を通す手術、輸血・透析、みたいな流れがあまりに展開はやかったので、1~2日の混乱はあったものの、意外と早めに心は落ち着きまして、いわゆる透析生活、週に3回は3~4時間の透析をしなければならないという、大きな制約と負荷のかかるこれからの人生に対して、「さて、どうしたものか」と腰をすえて向き合うような姿勢が早々に形成されていきました。

あ、違うな。
そんなことではなく、私がさっき書いた、日々のこと、病院的な時間以外には、読書・仕事・感謝の日々をおくっている。というその流れで、特に重要な「感謝のこと」 について書こうとおもったはずだったのに、降りて来るまにまに任せていたらどんどん話が散乱してしまいました。いや、でもそれがこの series まにまに のいいところです。まとめない。まとまらない。進むとか戻るとか、そういう概念はない。今がここに、ただ素直に、記録されていく、それが大事なのです。いや、大事がどうかもどうでもよくて、楽しいのです。

で、なんでしたっけ。そう「感謝のこと」ですね。
あー、でもちょっと書くのにも飽きたように思います。そろそろやめましょう。でも「感謝のこと」はきっとまた書きたい気持ちがわいてくるように思いますので、書くことになるでしょうね。月並みなことを書くことになりそうだけれど、たぶんあれですよ。みんながほんとに大事したいもの、みんながほんとのほんとに守りたいものって、なんてことない、月並みなもの。きっとそんな話になるような気がしますね。

なーんて、それっぽい伏線をはっただけにして、終わりしましょう。あ、最後にひとつ。わたくし、こと、

伊地知恭右
がぜん調子いいです

心配いただいている方々、ごめんなさい。かなり純粋な、穏やかな、それでいて精力的な、そんな感じなので、つまり、がぜん調子いいです。みんなお気遣いありがとう、本当に。今後に、ご期待ください。

それではまた、素敵な日々の、素敵な隙間でお逢いしょうしょう。Chao!!

おわり

と き)令和6年7月13日 am 6:41
ところ)手稲渓仁会病院F棟6階デイルームの窓際

鹿児島出身東京経由小樽着。 小樽銭函エリア、春香山の麓『古本屋 DUAL BOOKs』店主。

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