social distance で遊ぶ/失われた原稿

ブログ主の仕事やなんやの過程の中で、たたき台として作成し本当にたたかれて無に帰したものや、日の目は見たものの、世界に一切の足跡も残さなかったものなどを集めたもの。それが『シリーズ 失われた原稿』

今回の原稿は、ブログ主(ぢっち)のfacebookに渾身作として投下してみたものの、極端にリアクションの少なったもの。この種のユーモアにすら「いいね」を押しづらい空気が漂っていたあの頃を思い出しながら。(いや、記事の人気がなかったのを空気のせいにしているわけでない。決して、ない。)

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喪失日:2020年7月28日
場 所:札幌市内会社近くの喫茶店にて(おそらく)
テーマ:ソーシャル・ディスタンス

意味を問う遊び

ソーシャル・ディスタンス。

直訳は社会的な距離。われわれは大別して二つの距離をもって生まれた。個人的な距離と社会的な距離である。前者は一般には「自分のものさし」として表現される。現代風には「ワタシ的には…」というやつだ。モノゴトとの個人的な距離感、モノゴトの見方・捉え方などと同義であり、つまるところ自己の価値観そのものである。

これに対して、昨今巷にあふれている社会的距離とは、言うまでもなく「社会的なものさし」のことを指す。これを物理的な距離、2m、として捉えている人が多いのは困ったものである。物理的な距離は社会的な距離の狭小化された一部分でしかない。
これは ing 形にするとわかりやすい。ソーシャル・ディスタンシングとは、距離2mを確保すること、ではなく、「社会的なものさしを適用し続ける」という状態のことを言うのだ。つまり、昨今何かの都合で「今は、ソーシャル・ディスタンシング!」という文言を見聞きするが、それは

今は、社会的なものさしを適用し続けて!

という謎の呼びかけになっているという始末。
ところで、社会的なものさしとは、公民的なものから俗世間的なものまで幅広い。加えて、自分をとりまくすべてのモノ・コト・ヒトとの関係性を社会と捉えるならば、社会的なものさしとは、自分だけのものさし以外のすべてを指すことになる。「これ、完全におれっす。これ、完全におれだけの価値観っす」というもの以外はすべて、社会的なものさしなのである。

ここで多くの人が気づくだろう。
社会的な動物である我々は、これまでも、ほとんどの場面で、そして結構なレベルで、ソーシャル・ディスタンシングしてきたのだ。それは我々が生き残る戦略ですらあったのだ。その戦略は今、分別もなくあらゆる場所に張り出され、遠慮もなしに連呼され、野ざらしにされ続けている。当たり前のことをわざわざ言語化し、同時に狭小化され共有され始めた今、その狭小化された共有物に、生物としての生き残り戦略を見出すことはもはや困難となった。

いや、違うな。
狭小化することで、始めて踏み絵に足を踏み出すことが可能になったのだ。狭小化されたソーシャル・ディスタンシングを踏み絵とすることで、本来のソーシャル・ディタンシングすらも超えようとしているのだろう。

世界は、今
「社会的なものさしを適用し続ける生き方」を
超え始めているのだ。

どーん。

 

語呂だけで遊ぶ

昨今ストリートで新たなダンスシーンが熱を帯びている。

その熱源に一つの新しいダンスが存在する。いま、世界中でもっともフィロソフィカルでホリックなダンス、『ソーシャル・ディス・ダンス』だ。

ディスが、dis なのか this なのか。
それは踊り手の解釈に任されている、だけでなく、観る側の主観(個人的なものさし)にも委ねられている。新たなダンスシーンは、確定的なネーミングを放棄した。彼らはネーミングがフレーミングであること知っている。自分たちがフレーミングされるその怖さを知っているのだ。

とはいえ、ネーミングの放棄は虚無的な態度ではない。
むしろ言葉の神秘的な力を信じるからこそ生まれる、フレームとの新しい闘いなのである。フレームとの闘いとはすなわち、次元との闘いである。彼らはその身体性を通じて、フィジカルに、フィロソフィカルに、そしてホリックに、次元と闘っているのだ。

『ソーシャル・ディス・ダンス』。
人々は今、次元の接点で舞い踊る。

  

配置としての遊び

ソーシャル・ディスタンスは
人々の配置を変え
人々の心の感染距離を縮めた

後に、そのうちの何人かは、
物理的な距離を超え始めた。

 

本日の遊びのまとめ

 

世界は今、
次元の接点で舞い踊りながら、
物理的な距離を超え、
社会的なものさしを適用し続ける生き方を
超え始めた

 

はーい、よくできましたねーー

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2024年7月28日 喪失 完了しました。

鹿児島出身東京経由小樽着。 小樽銭函エリア、春香山の麓『古本屋 DUAL BOOKs』店主。

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