友人からとてもシンプルな質問をいただいた。
「古本屋に興味があるけれど、新刊書店で買えばいいじゃん、とも思う。古本屋というのは、希少本・絶版本などに出会えるのが醍醐味、ということでいいだよね?」
古本好き、古本フリークというのは多種多様だし、そもそも本好きは新刊書店と古本屋を差別化せずに、その特徴に応じて使い分けているだけという人も多いだろう。あるいは新刊書店・古本屋側から見た業界的な事情も多分にあるだろう。そんなわけで、とにもかくにも、この質問への回答は全く多様に存在する。
とはいえ、これから古本屋をやろうとしてるワタクシとしては、自分なりの回答を明示しておく必要がある ように思う。それが例え時点的なものであれ、今後の自分の変化を期待して時点版を記録しておく、という意味でも有意義だろう。
そんなわけで、友人への回答を微修正してこちらで公開しておきます。みなさまはいかがお感じでしょうか。
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質 問
『なぜ本屋ではなく古本屋で買うのか。古本屋の何が楽しいのか』
現実的な回答
・一般の新刊書店は「売れ筋」のものばかりを多く扱わないと商売にならないので、「ちょっと変わったもの」がかなり少ない(例えば高価な専門書とか一般受けしない漫画とか誰?みたいな海外小説とか)。
・大型の新刊書店は「ちょっと変わったもの」も多数そろえているが、本の海の中でそれを探しあてるのは相応の動機と場合によっては知識・経験がいる。
・一方古本屋は、基本的に新刊より安い。
・この「安さ」だけを求めるならブックオフなどのチェーン店は取り扱い数も多く便利だ。
・では個人の小さな古本屋にどんな価値があるのか?
・一言で言えば「店主によりブランディングされた世界」との出会いではないだろうか。
・そこは洋の東西を問わず、時代の新旧を問わず、価格の高低を問わず、分野を問わず、店主のオリジナルの感性によって値付けされ、陳列された世界。
・もちろん希少本、絶版本との出会いは古本屋独自のものだが、一番の醍醐味はこの「特定の感性よって創られた世界との出会い」だと思う。
・そして、その店主の世界が、自分の内世界と近いものだとしたら・・・そこには本との豊かな出会いがあるに違いない。自分の内世界の進化や深化を手助けする智慧の宝庫にすら見えるだろう。
・要するに、ある種のこだわり(ブランディング)によって構成された世界(古本屋)の方が、自分の内世界を映しだす鏡としてきっと「おもしろい」のだ。
抽象的な回答
特定の本を探す、買う「だけ」であれば、新刊書店と古本屋の間に違いはない。あるとすれば、「それぞれ特異分野」があるだけだ。ましてやネットでたいていのものが探せる時代は、そもそも実店舗で買う意味もない。
特定の本を買う「だけ」であれば。
それは、自分の求める女性と出会いたい「だけ」であれば、合コンよりもナンパよりもマッチングアプリをこつこつ続けていけばいいのと似ている(知らんけど)。ところが、我々の多くは、何かを求めるときに、「だけ」では動いていない。
本もきっとそうだろう。
結局、我々が求めているのは知識や情報、あるいはエンターテイメント性「だけ」ではない。どんな動機であれ、われわれが本を求めるとき(もしかして何かを求めているときすべてにおいて)本当に求めているもの、その一番の根っこは「自分との出会い」であろう。
我々は自分を映す鏡として本を探し求め
自分を映す鏡として本を読んでいるのだ。
この「自分を映す鏡」を探し出すのははっきり言って難しい※。「ぼくは、今、鏡を、探しているのだ」という自覚の有無に関わらず難しいだろう。でも、人はその人生において否が応でも自分の内世界を求める。その過程でおおよそ自分の色、好む世界、つまり内世界の色合いをある程度自覚する。そしてその内世界の色合いに近いコト、モノ、ヒトを求める。
そのとき、その内世界を映しだしたかのような本屋があるとしたら・・・・
その内世界の色合いにことごとく似通った本屋があるとしたら・・・・
それはきっと店主の個性(内世界)によって創造された古本屋であることが多いのではないだろうか。
※難しいというか目の前の現象すべてがそうだと思えば簡単なのだが、実際のところそう易々とはできない。
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いかがでしょうか。改めて読み返してみると、まぁとっても「古本屋より」の記載になっていますね笑
だって、「店主の個性によって創造された世界」を重視しているけれど、そんなこと言ったら店主の個性あふれる新刊書店だって無数にあるし(むしろ流行っているし)、店主の個性など感じられない古本屋だったたくさんあるでしょうに。
でもまぁ、ここは「古本屋に興味があるけどまだその一歩を踏み出していない人に向けてのメッセージ」という性格上に鑑みて、「古本屋って、こんな感じで楽しいのよー」という記述になっているのだとご理解ください。そしてまた、ワタクシは、実際にそんな楽しい古本屋を創ろうと思っているわけなので、この記事の「荒さ」については、今後への期待でかき消していただければ幸いなのでございます。
それではまた、素敵な日々の素敵な隙間にお逢いしましょう。
Chao!!